2026年4月1日より、自転車の交通違反に対しても「青切符」が導入されるのをご存知でしょうか?
これにより、「ながら運転」を含む113の違反行為に対して反則金が科されることになります。
では現在日本国内で、自転車の交通違反を減らし、正しい交通ルールを広めるために、どのような教育や啓発活動が行われているのでしょうか?
この疑問に答えるべく、一般財団法人日本自転車普及協会が全国的な調査を実施し、その結果をまとめた報告書を発表しました。
調査の背景と目的
内閣府の「令和5年度交通安全白書」によると、近年、自転車事故が増加しており、深刻な社会問題となっています。
一方で日本の自転車乗用環境は他国に比べて整備が不十分であり、幅広い世代に安全な乗り方が浸透しているとは言えません。
このような状況を受け、警察庁は昨年2024年7月8日に
「自転車の交通安全教育の充実化に向けた官民連携協議会」を立ち上げ、
「交通安全教育」「違反取締」「交通規制」の3項目を推進することで、事態の改善と自転車が関わる交通事故の削減を目指しています。
こうした中で、同協議会に参画している一般財団法人日本自転車普及協会は、国の公的機関や民間団体が行う自転車交通安全教育講習会の実態を明らかにするための調査研究を行うことになりました。
調査の内容と今後の展望
今回の調査は2024年度から3年間計画で実施され、初年度となる2024年10月から2025年3月までの期間中に「網羅調査」と「抽出調査」の2種類が行われました。
行政・公的機関や民間団体が行う様々な自転車交通安全教育講習会の内容が調査・研究され、今回の報告書にまとめられています。
この調査結果を基に、より実効性のある交通安全教育カリキュラムを模索するとともに、その普及を図るシステムやツールの開発・確立を目指していくとのことです。
本調査は、一般財団法人日本自転車普及協会が主体となって実施し、株式会社ルーツ・スポーツ・ジャパンが調査設計、調査・集計・分析実務、および事務局を担当しました。
自転車の安全利用がますます重要になる中で、今回の調査結果が今後の交通安全教育の発展にどのように貢献していくのか、注目されます。
調査概要
○調査の名称: 2024年度自転車交通安全教育機会拡充に向けた実施状況調査研究事業
○実施主体: 一般財団法人日本自転車普及協会
○事務局: 株式会社ルーツ・スポーツ・ジャパン
※競輪機械振興補助事業の補助を受けて実施
1. 網羅調査
● 目的: 現在日本全国で実施されている自転車交通安全教室の
頻度、規模、内容、種類、回数、効果、課題について、全体像を網羅的に把握すること。
● 調査方法: 全国1,788の地方自治体(都道府県および市町村)を対象とした網羅的な全数調査。
2. 抽出調査
● 目的: 国内で主体的に「自転車交通安全教室事業」を行っている各団体(官民問わず)について、
対象、実施内容・種類、実施回数、得られた結果・効果・課題、今後必要な施策や情報などを
詳細にヒアリングし、各団体特有の実施状況を深く把握すること。
● 調査方法: 特定の団体に絞ったヒアリング面談による聞き取り調査。
● 調査対象: 予備調査の対象団体数は計428団体。
予備調査を経て、詳細ヒアリングを行った団体数は計22団体。
調査結果サマリー
【網羅調査から見えたこと】
● 交通安全施策全般:
○ 「自転車交通安全の啓発・対策」を重点施策としている割合は、
市区町村で31.6%、都道府県では57.1%であった。
○ 都道府県では条例改正や啓蒙キャンペーンといった大規模な施策が、
市区町村では自転車交通安全教室のような地道な取り組みが重点的に行われている。
● 自転車交通安全教室の現状把握:
○ 市区町村のうち54.3%が、管轄地域の自転車交通安全教室を何らかの形で把握している。
把握の方法は、行政自らの調査による把握が(把握している市町村のうちの)43.1%。
警察からのデータ提供による把握が、同じく11.9%。
○ 都道府県のうち39.2%が、管轄地域の自転車交通安全教室を何らかの形で把握している。
把握の方法は、行政自らの調査による把握が(把握している都道府県のうちの)8.3%。
警察からのデータ提供による把握が、同じく50%。
○ 市町村の方が現状把握の精度は高いものの、
把握している自転車教室の詳細回答結果等から、
いずれの自治体も詳細までは把握しきれていない可能性が示唆される。
● 自転車交通安全教室の状況:
○ 2024年度に実施された自転車交通安全教室の実施団体の90.9%が公共団体であった。
○ 対象年齢は、幼児(6.0%)、小学生(42.2%)、中学生(22.5%)、高校生(10.0%)、
成人(7.2%)、親子(3.5%)、高齢者(8.5%)であった。
○ 補助輪外し(1.2%)、乗り方教室(30.4%)、座学(30.3%)、シュミレーター(4.9%)、
スケアードストレート(4.9%)等であった。
【抽出調査から見えたこと】
● 様々な団体がそれぞれの実情や分野・役割において自転車交通安全啓蒙活動を実施している
ものの、「活動の横の連携が不足」しており、それに伴って「コンテンツの更なる充実」や
「効率的な実施計画の策定」がしづらい状況が課題として挙げられる。
● 官民が連携し、ハード面とソフト面を包括的に整備することで自転車事故件数が減少した先
進的な自治体もあり、その取り組みは他地域にも展開されている。
● デジタルを活用した実証実験も一部地域で始まっており、
自転車交通事故減少に向けたデータ取得と交通安全活動への活用が期待される。
※本調査結果は、ご回答いただいた自治体や団体からの回答結果に基づいており、
現在国内に存在する全ての自転車交通安全施策を網羅しているわけではないことにご留意ください。
調査結果報告書「完全版(計188p)」のデータダウンロード
「2024年度自転車交通安全教育機会拡充に向けた実施状況調査研究」報告書では、
今回の発表内容に加え、詳細な調査結果を掲載しています。
詳細は下記よりご確認ください。
報告書はこちら:https://www.bpaj.or.jp/?tid=102079
(一般財団法人日本自転車普及協会サイト内)
調査結果の引用・転載について
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必ず「出典:2024年度 自転車交通安全教育機会拡充に向けた 実施状況調査研究事業(一般財団法人日本自転車普及協会)」と明記いただけますようお願いいたします。
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